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桑原 繭 のエッセイ








ロス・グラシアレス国立公園 ペリトモレノ氷河 その2

朝、カラファテを出発、バスとフェリーを乗り継いで、ペリトモレノ氷河へ到着する。アイゼンを装着し、氷上を歩く氷河トレッキングへ出発だ。

モレノ氷河トレッキング

ガイド3名に、参加者20名程度で隊列を組んで、歩いて行く。氷上には、いくつかの隊列が見え隠れする。 遠くから見ると、ほぼ平らに見える氷河の上だが、実際、その上に立つと、とんでもなく、凸凹している。歩くと行っても、ほとんど雪山登山と変わらない気分。ガイドに付いて、すべらないようにアイゼンを雪に咬ませながら慎重に歩く。

一応、季節は真夏なので、日中の日差しで表面が溶け出しているのが分かる。途中、いくつものクレバスを見ることができ、その中は水が流れている。貫けるような水と氷の青さが神秘的で、吸い込まれるように綺麗だ。どれくらい深いのだろうか?氷河の規模からすると、底まで突き抜けていれば、60〜100mということになろうか。

登り下りを繰り返すうちに、体が汗ばんで来るが、一息つくと、天然クーラーの冷たい風に汗が冷えてくる。途中、ガイドが、ピッケルを使って、沢山ある氷山のいくつかに登頂してみせてくれる。一体、どれくらいの高さになるのか、はるか遠くに点になって見える。すごい。スイスイ登って、あっという間の出来事だった。プロの為せる技だ。

さて、素人の我々は、しばらく歩いたら疲れてきた。そろそろ休憩を取るらしい。簡単な木製のテーブルには、氷河が砕かれ、ウィスキーがロックで並べられている。ボトルを持参している人もいた。普段は、ウィスキーのロックなど飲むこともないが、ここでは、自然に口にしてしまう。体が温まったのか、冷えたのか、ビミョーだけど、氷上で飲む「ロック」は、いろいろな意味で格別。

ぐるりと一周して、アイゼンを付けた場所まで戻ってきた。我々が歩いたのは、氷河のほんの端っこの部分で、しかも全体からみれば、ほとんどなだらかな部分だったと思うが、十分その壮大さを体感できた。1時間くらいのトレッキングだったと思うが、慣れないアイゼンでの歩行で、疲労した。

ランチタイム

アイゼンを外し、また陸を歩いて船着場の方に戻る。船着場近くに、丸太小屋がある。椅子とテーブルだけで、暖房も何もない部屋だが、風が避けられ、日差しで十分に温かい。トイレの設備も整っている。ここで、ランチタイム。ホテルから持参したお弁当を食べる。この時期、昼間は暖かいので、外で岩場に座り、氷河を眺めながらのランチタイムも壮観だ。 

ランチを終えて、しばらくすると、迎えのフェリーが着く。フェリーで来た道を戻る。相変わらず、氷河のかけらと、氷河に近づく観光船が浮いている。

こうやって、我々が目にする山と氷河の景色は、一体いつからあるのだろう。人間が歩き始めるより、もっと昔から、変わらない光景なんだろうな。

展望台

テンパノス水道を戻り、マガジャネス半島を反対側にぐるっとバスで回ると、モレノ氷河を眺めることのできる展望台がある。氷河の先端に沿って、遊歩道が設置され、一周するだけでも、30分は必要だろうか。氷河の崩落を見るために、何時間も粘っている人達もいる。
時折、パンッと銃声のような音が響き渡り、氷が水面に落ちたのを告げる。どこで落ちたのかわからない位の小さなかけらの崩落だ。されとて、何トンものの重さゆえ、大きな音になる。巨大な氷の崩落は、そう滅多に見られるものではないが、目に留まるような規模で崩落があると、ドッドッドッという音と共に、地面から体に振動が響き渡る。その後、水面に大小の氷の塊がプカプカ浮いているのが確認できる。

1時間ほど、展望台から大きな崩落を期待して見守るが、小規模なものしか見れなかったり、それも、音に目をやると崩落後であったり、目の当たりにするのは千載一遇だ。

見ていて飽きない光景だが、限がないので、ここらで、ペリトモレノ氷河を後にすることにしよう。